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産学連携と中小企業 鍵握る経営者の明確なビジョン
国内外の電子機器関連企業などから超微細加工技術(ナノテクノロジー)などが注目されている東大阪市のクラスターテクノロジー(安達稔社長)。ユーザーの要望に応じ合成樹脂複合材料の開発・製造や、その複合材料からナノテクで基幹部品を開発・生産している。年商六億円、従業員四十七人だが大学院卒の人も入社する企業だ。 【examiner(イグザミナ) 2003年11月号 雑誌掲載】

今でこそ産学連携がかまびすしくいわれているが、大阪大学の川合知二教授と有機・無機の複合体の共同研究を一九八三年に始めています。発端は中小企業としての生き残り作戦でした」と話す安達社長。
「大学を困ったときの相談所や、何かもうけるネタを探す場所と位置づけるのはどうか。やはり大学と連携して何を目指すのかが、まずありきだと思う。経営者として事業計画やビジョンをもち大学との連携に臨むことが大事」。
ある中小企業のトップが某私大が設立した産学連携組織の例会に出席したとき、ある企業の社長から「この大学と取り組んでいるが、成果なんてあがりませんよ」とささやかれたという。「どういうことですか」と聞き返さなかったがそのとき「産学連携で何を取り組むのか、何を目指すのか」を経営者がきちんと確立しておくことが大切と痛感したそうだ。

好機拡大に潜む落とし穴 大学選びに必要な目利き

来年四月から独立行政法人となる国立大学は、研究費を外部から到達することが必要になってくる。そのため関西の国立大学でも企業との連携に向けた動きが活発化している。
神戸大は「一日神戸大学」として七月に大阪・中之島センタービルでバイオ分野の研究成果六件を紹介したのを皮切りに、九、十一月、来年一月に播磨地区、尼崎、相生でも開催。大阪大は来春に国内最大の規模の産学連携組織を開設、全学の知的財産を管理し、企業との共同研究の受け皿や研究成果の事業化のための機能を集約する。企業からの技術相談などの窓口になり中小企業との連携を強化する。
一方、五月には東京大が大阪市内で「産学連携交流の集い」を開催し幅広い研究テーマを関西の企業に提示した。また東大阪市など中小企業が集積する地域との協力も打ち出すなど、大学間競争が激化している。こうした国立大学の企業との連携を積極化する動きは活性化や安定成長、さらなる発展を指向する中小企業にとって好機だ。
だが、そこには落とし穴も潜む。大阪産業大の山田修教授との共同研究で「アロマチップ」を製品化し販売した東大阪市の
アドバンスの安川昭雄会長は、「三年前にトウモロコシを原料にした育苗ポットの開発で初めて関西の著名国立大学へ相談のため足を運びました。ところが相手にされず門前払いされました」と打ち明ける。
安川さんは会社勤めしていたときアメリカ駐在を経験。「シカゴの郊外でしたが、アメリカでは大学は地域との交流は当たり前で研究室にも入れました。ですから日本でもいけるだろうと思ったんですが、その国立大学の目線が中小企業に向いていなかった」と振り返る。
事実、著名国立大学だけでなく大学は「大口の資金が得られる大手企業と組みたがる」という声も聞く。そのため大学が企業との連携を強化しているといっても、中小企業との連携を前向きにとらえている大学や先生の目利きも必要になってくる。その判断基準として大阪産業大学の山田教授は「飛び込みで大学に行ったときは、相手の先生がいつごろから企業と共同研究しているか、特許をもっているかを調査すること。特許をもっていて長年、企業と共同研究している先生は受け入れる土壌があります。私学なら直接先生にもちかけることを勧めます」。

資金の負担軽減策に道 産学共同で補助金申請

「産学連携はぜひとも取り組みたいが、資金がどれだけ必要か気になる」という中小企業の経営者も多い。これについても山田教授は「お金の負担はゼロからスタートして必要になってくる段階を見通し研究費を産学共同で公的機関などへ申請すれば資金力のない中小企業は負担が軽減します」
また京都工芸繊維大学地域共同研究センター長の木村良晴教授は「中小企業が単独で研究費の補助金申請をしてもなかなか認められないが、共同研究する大学といっしょに補助金申請をすると認可されやすい」と話す。とりあえず資金面は二次的な位置づけで取り組めばよさそうだ。アドバンスの安川会長は「アロマチップの開発までに投下した資金は百万円もかかっていません。大学側と共同で補助金申請をして研究費を調達しました」という。京都造形芸術大と連携している京都を拠点に洋菓子店「マールブランシュ」を十四店展開するロマンライフの河内誠社長は「すでに商品提案などを大学からしてもらっているが、費用は実費分だけ」と大きな負担になっていない。
産学連携で重要なのは知的財産権の管理問題だ。とくに大学側の特許連携推進会議で産業界から指摘された。企業が大学のもつ特許を使用し事業化を進めようとしても周辺特許もおさえておかないと事業化が難しいことが多いといわれるためだ。これを含め共同で開発した場合の知的財産の管理など、産と学の話し合いによる取り決めなどが必要だ。
大量生産・大量消費をベースにした企業規模拡大の時代は去った。「これからはオンリーワン企業を志向する」と河内誠社長。その序曲になるとされるのが産学連携だ。そこで鍵を握るのは中小企業経営者がどこまで明確なビジョンをもち取り組めるかだ。もちろん自ら大学の門をたたく熱意。スタートは相談からでも構わない。信頼関係の醸成も不可欠なのはいうまでもない。日本経済を支えている中小企業の生き残り策として成果にむすびつけたい。

 
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